ある町医者の診療日記

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zoom RSS 事故調試案パブコメへの厚労省の回答

<<   作成日時 : 2008/10/13 18:53   >>

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まずこれを読んで下さい。
http://mric.tanaka.md/2008/04/26/_vol_51_1.html
臨時 vol 51 小松秀樹氏「現場の医師のパブリックコメントが状況を動かす」

ここで小松先生は、WHOの「World Alliance forPatient Safety WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning Systems(患者安全のための世界協調 有害事象の報告とそれに学ぶシステムについてのWHOガイドライン草案)」を紹介し、こういう「医療安全に関わる専門家の常識」と厚労省案がいかに乖離しているかと批判しています。そして、「厚労省が考えていることは、以下の3つの場合のいずれかと想像される。」として、
-----(ここから引用)-----
 場合1 厚労省が、WHOの考え方を認識しており、かつ、正しいと判断していたとすれば、厚労省が虚偽の説明をしたという推測を可能にする。この場合、巷間ささやかれている、責任追及の制度化で、厚労省の権限強化と組織拡大を図ろうとしているとする推論が、説得力を持つことになる。

 場合2 WHOの考え方を認識しており、かつ、正しくないと判断していたとすれば、厚労省はその根拠を説明する義務がある。安全向上と責任追及の両者を一つの制度で実施することには無理があると、多くの専門家によって指摘され続けてきたが、厚労省からは、納得のいく説明は今までなされていない。

 場合3 WHOの考え方を知らなかったとすれば、厚労省には医療安全政策を立案する資格がない。
-----(引用、終わり)-----

このWHOのガイドラインを元にパブリックコメントを提出されたかたがおられたようで、それに対し厚労省が回答しています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/10/dl/tp1009-1a.pdf
3 医療安全調査委員会は、世界保健機関(WHO)が平成17年に公表した「有害事象の報告及び学習の仕組みに関するガイドライン案」に沿ったものとすべき。
これに対する厚労省の回答がこれです。
-----(ここから引用)-----
 当該ガイドライン案は、平成17年に原案として公表されたものであり、今後更
に検討される予定と聞いています。
 また、我が国においては、当該ガイドライン案においても紹介されているとお
り、当該ガイドライン案でも示されている考え方に立った仕組みとして、平成16
年より、財団法人日本医療機能評価機構において医療事故情報収集等事業が実施
されています。この事業においては、特定機能病院や国立病院機構の病院等の医
療機関を対象として、患者に有害事象が発生した事例、さらには事故には至らな
いインシデント(ヒヤリ・ハット)まで含めて幅広く事例の収集・分析を行い、
医療安全対策に有用な情報を提供しています。
 一方で、そのような仕組みだけでは、医療事故による死亡について真実を知り
たいという患者遺族の願いや、現在の医療事故死等に係る刑事責任との関係に関
する問題等についての解決にはならないという意見もあります。このため、医療
事故による死亡に係る原因の調査や臨床経過の分析・評価等を専門的に行う機関
の設置を提案しているものです。
-----(引用、終わり)-----

厚労省は、小松の言う「場合2」のようです。
WHOのガイドラインは正しくなく、採用しないと。
しかし、なぜ正しくないと判断しているのか、この回答を読んで分かるかたいるのでしょうか?

「真実を知りたいという患者遺族の願いや、現在の医療事故死等に係る刑事責任との関係に関する問題等についての解決にはならないという意見も」あるからというのが採用しないという根拠?

患者遺族の願いなる「真実」とは、医学的な、客観的な「事実」とは異なる。
患者遺族の願いなる「真実」とは、担当医やスタッフを土下座させ、賠償金をふんだくる根拠となる「真実」でしかない。他者を罰して、自己正当化できる「真実」を欲している者に、医学的な客観的な「事実」を示しても、それは自分たちの「願い」とは違うと言うのは当然でしょう。
また、「現在の医療事故死等に係る刑事責任との関係に関する問題等についての解決」のためとはどういう意味なのか、さっぱり理解できない。
WHOのガイドラインは、刑事責任とは完全に切り離せと言っている。切り離すこと、それが「解決」なのに、「解決にならない」とはどういう意味なのか。

なお、医療事故調でもこのガイドラインについて発言した人がいたようです。

http://lohasmedical.jp/blog/2008/10/post_1420.php
死因究明検討会14
-----(ここから引用)-----
と、高本委員が手を上げ
「WHOのガイドライン案を根拠に、医療安全調が警察に通知するのは反するんでないかという主張が多い。そこで調べてみた。05年にドラフトが出ているのだが、オリジナルではなく、02年のニューイングランドジャーナルに載った論文が元になっていて、さらにそれは02年のナショナル・クオリティ・フォーラムという集まりのナショナル・クオリティ・コンセンサス・リポートということで座長のカイザーさんという人が発表している。つまりWHOのは孫引きである。カイザーさんのオリジナルを読むと、違法なことは司法に通知すると書いてある。全く処罰しないというものではない。医療安全調査委員会も似たようなもので警察へ通知する仕組みがあってもおかしくない
-----(引用、終わり)-----

WHOのガイドラインのオリジナルを書いたカイザーさんは、「違法なことは司法に通知する」と言っているじゃないかと。
しかし、これもどうもおかしいようです。

http://blog.goo.ne.jp/marcy1976/e/d6f4aededf1a07e4b396e2e005e30422
WHOのガイドラインって何の孫引き?
-----(ここから引用)-----
確かにこの7項目がまとめられた表(P.51)は高本先生が指摘するNEJMからの引用です。

Leape, L.L. Reporting adverse event. New England Journal of Medicine, 2002, 347 (20): 1633-8

WHOのガイドラインは以前にさーっと目を通していましたが、上記のNEJMの記事は読んだことがなかったので、読んでみました。

すると、この7項目の表(TABLE 2. CHARACTERISTICS OF SUCCESSFUL REPORTING SYSTEMS.)の引用元は、高本先生が主張するKaiserさんのが元ではなくて、

Cohen MR. Why error reporting systems should be voluntary. BMJ 2000;320:728-9.
Connell L. Statement before the Subcommittee on Oversight and Investigations, Committee on Veterans’ Affairs. Washington, D.C.: U.S. House of Representatives, 2000.
Cohen M. Discussion paper on adverse event and error reporting in healthcare. Huntingdon Valley, Pa.: Institute for Safe Medication Practices, 2000.
Gaynes R, Richards C, Edwards J, et al. Feeding back surveillance data to prevent hospital-acquired infections. Emerg Infect Dis 2001;7:295-8.

の4つでした。(WHOのガイドラインの当該部位のreferenceとほとんどかぶる引用)

高本先生の主張しているKaiserさんのNational Quality ForumにおけるNational Quality Consensus Reportの内容というのは、NEJMの7項目の表(TABLE 2. CHARACTERISTICS OF SUCCESSFUL REPORTING SYSTEMS.)とは別の表の、TABLE 3. LIST OF SERIOUS REPORTABLE EVENTS.の引用元でした。

なんと本筋とは違うところを見て、WHOのガイドラインがそれ(Kaiserさんのオリジナル)の孫引きだと主張しています。確かに、KaiserさんのもWHOのガイドラインに引用されていますが(WHOガイドラインのP.15)、全然別の内容での引用で、司法への通知がどうのという議論とは全く関係ないです、
-----(引用、終わり)-----

そもそもカイザーさんとは別ですよと、そして、「違法なことは司法に通知すると書いてある」とカイザーさんの言う「違法なこと」とは何かが今、問題なわけです。
医療における「過失」は、刑事罰として罰すべき「違法」なことなのかと。
刑事罰として罰すべきことがらではないのではないかと言っているのに、「違法なことは司法に通知する」では答えになってない。

誰も、全ての医療行為を罰すべきではないなどと言ってはいないのです。
「故意」で、医療行為に見せかけて殺したなどというのは「違法」です。そういうのは「司法に通知する」のは当然です。
しかし、患者を助けよう、治そうとした医療行為でも、全てが望み通りの結果が得られるわけではない、その望ましからざる結果でもって「過失」があった、よって「司法に通知する」では、医療の安全には寄与しないってことです。
WHOのガイドラインは、それと正反対のことを主張している。

WHOのガイドライン
http://www.who.int/patientsafety/events/05/Reporting_Guidelines.pdf

ななのつぶやき
(ここのコメントに、鶴亀松五郎さんがこのガイドラインを紹介した)
http://blog.m3.com/nana/20080408/1

分かりやすく書かれたブログ
医療安全委員会をきちんと機能させるために ―WHOの勧告から―
http://obgy.typepad.jp/blog/2008/04/post-1341-29.html

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