ある町医者の診療日記

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zoom RSS 混合診療解禁 誰を救うのか

<<   作成日時 : 2007/12/02 11:50   >>

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今日の日経新聞の3面に「混合診療禁止 誰を救うのか」という記事が出ていました。
もちろん日経新聞のことですし、その上「けいざい解読」というところの記事ですから、混合診療禁止の反対、つまり解禁しろっていう主張の記事なんだろうとは、簡単に予想できました。
結果は、その通りで、内容もあの経済諮問会議とか、財務省、さらには八代なんとかの御用学者の主張の焼き直しでしかない。

解禁しろとの主張は、禁止しておくべきだという2つの根拠に反論する形で行っています。
禁止しろという主なものは2つだというのです。他にもより重用でより本質的な理由があるのですが、むりやりそれも自分の主張に都合がいいものだけを上げたってことでしょう。詭弁によく使われる手です。

1)患者に保険外の医療費を求める医師が増える。
2)有効性や安全が確認できない非科学的な医療を助長する。

1)なんて主なものですかね、そんなの枝葉末節な理由なのじゃないの、少なくとも私は初めて聞いたです。
2)の可能性は大いにあります。
ただし、日経新聞は、2)について、「患者に有害で危険な医療をする不届きな医師を取り締まれば、杞憂に終わる。それは自由診療でも保険診療でも、あるいは保険診療でも不可欠である」と書いていますが、まさにあさっての主張としか思えない。わざと論点をそらしているのでしょう。
怪しげな医療で儲けようとする者達が「有害で危険な」ことをするはずがないではありませんか。
無害で安心な」ことをして、患者から金と時間を搾取する、それこそが「有害で危険な医療」よりはるかに社会には「有害」なのです。
「無害で安心な」自称「医療類似行為」はたくさんあります。
そういうものがインターネット上に、それこそ無数にころがっています。
http://blog.hashimoto-clinic.jp/200602/article_47.html
http://blog.hashimoto-clinic.jp/200602/article_44.html
この「勝訴した」とされる清郷某という人が受けた保険診療外の治療は「活性化自己血リンパ球移入療法」ってのも、はたして本当に効果があるのか怪しいもんです。
一応、2004年8月に厚労省より高度先進医療として認められたようですが(http://www.m-clinic.jp/kasseikajikorinnpakyuu.htm)。

ガン患者は、詐欺師の標的になりやすい。
藁をもすがりたいと思っている人に、藁を差し出すと、すぐつかむ。
それがどれほど、高額だろうが、どれほどその人の貴重な時間を食いつぶすものだろうがです。そして、いったん掴んでしまうと、それが藁だと分かろうとするのを人は拒否するようになります。
社会心理学では、これを「認知的不協和」と呼んでいるようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%9A%84%E4%B8%8D%E5%8D%94%E5%92%8C
http://homepage1.nifty.com/NewSphere/EP/b/psych_fukyowa.html
高額の詐欺にかかった被害者ほど、その被害を認めたがらないとか、たばこを吸っている人が、喫煙の害を認めるのを拒否し、逆に喫煙にはこんないい面もあるんだと主張するのも、カルト宗教に身も心もさらには全財産も捧げているような人が、その宗教の否定的面を拒否するのも、「認知的不協和」という人の心が持つ機能で説明できる。

医療は、もっとも大事な「命」というものに直結している分野です。
そこに、怪しげな「療法」が入り込むのは絶対に阻止しないといけない。

しかし、当人が自由意志で(この自由意志とか自己決定とかいうのが難しいのですが)、その「治療」を受けたいとするものを、他者が禁止するのも間違っています。
情報は知らせるべきでしょうが、その上で、当人がやると決めたのなら、後は自己責任です。
ただし、それは公的保険ではなく、自分の金でやりなさいということです。
それも全額。
公的保険のつまみ食いをさせては絶対にいけない。

さらにもう一つだけ、混合診療を解禁した場合の不合理なこと、先の理由よりもっと大事な理由かもしれなことを上げておきます。
歯科分野は、ほとんど野放し状態の混合診療です。そのために、誰もが有効と認める歯科治療でも、自費診療のまま放置されているものがたくさんある。
もし医科でも、混合診療解禁としたら、同じようなことが必ず起こるでしょう。
本来は、そういう「有効だと確認された医療行為」は、できるだけ早く保険診療に入れられるべきなのです(先の活性化自己リンパ球移入療法も、本当に有効と確認されたら、保険診療とされるべきです、そうじゃないのなら、自費でやれと、それも全額)。それが、認められず自費診療のまま多数の「有効な医用行為」が放置されたら、いったいどうなるでしょうか?
一番、儲かるのは医療保険を販売している保険会社であるのは、明かだと思います。

混合診療解禁、誰を救うのかという問いの答えは「医療保険会社」です。
オリックスの宮内会長は「家を売ってでも医用費をまかなえ」と言った。
http://www.med.or.jp/nichinews/n170605j.html
-----(ここから引用)-----
オリックスグループのCEO(最高経営責任者)であり,規制改革・民間開放推進会議の議長を務めている宮内義彦氏は,混合診療が目指す姿を,「国民がもっとさまざまな医療を受けたければ,『健康保険はここまでですよ』,後は『自分でお払いください』というかたちです.金持ち優遇だと批判されますが,金持ちでなくとも,高度医療を受けたければ,家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう」(週刊東洋経済二〇〇二年一月二十六日号)と説明している.これが,彼らの「選択」という言葉の中身なのである.私たち普通の医師には,「家を売れ」という台詞は口が裂けてもいえない.
-----(引用、終わり)-----

「高度医療を受けたければ家を売ってでも受けるという選択」を求められる社会、そういう社会にオリックスの宮内会長や日経新聞はビジネスチャンスを見いだしているんでしょう。

私は、そんな社会は嫌です。
そういう社会で医療をやりたくはない。
うまくやれば、今よりはるかに裕福な生活ができるでしょうが、今程度でいいから今の医療を続けたい。

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