ある町医者の診療日記

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zoom RSS 奈良事件>明らかな捏造報道

<<   作成日時 : 2006/10/29 17:15   >>

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10月17日、毎日新聞がスクープした「意識不明、6時間“放置” 妊婦転送で奈良18病院、受け入れ拒否 脳内出血死亡」という報道は誤報であることが明らかになってきました(ただし、こう認識できているのは医師ばかりで、医師以外ではごく少数のようです)。
まずこのメッセージを読んでください。例のm3.comに一二産科二二産科さんが投稿されたものです。全文を引用します。著作権や守秘義務などの問題はあるのですが、いろいろ考えた末、そうすることにしました。
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最終の報告
投稿者:  一二産科二二産科

ここ2,3日で私自身が知りえた事を書きます。たぶんこれ以上はもう解らないと思います。

妊娠中
(1)最終月経は平成17年10月23日より5日間。近くの開業医で妊娠と診断され、同年12月20日大淀病院産婦人科初診。
(2)初診時子宮の後壁に28*18の筋腫核指摘。既往歴、家族暦には特記すべきことなし。
(3)同年12月31日、感冒症状あることと、悪阻強く、何度も嘔吐するため、本人より病院に電話があり、点滴を希望される。当直医指示により点滴を行う。この悪阻症状は 2月まで続き、そのため時々点滴を受けた。
(4)妊娠経過中はきっちり指示どおり来院、同病院で行われた母親学級も3回きっちり受講した。妊娠経過は順調で血圧も高くなく、96- 118/50-60 mmHg で経過しPIHの所見もなかった。他の検査、超音波やX-ray film によるpelviometry も行われたが新しい筋腫核がもうひとつ見つかったぐらいで、ほとんど異常なく経過した。また分娩は夫立会いを希望し、所定の承諾書に署名捺印を行った。
(5)同年7月(妊娠37週)の外来受診時、時々ひどい嘔吐があることを訴える。
(6)妊娠40週頃2回行われたnon-stress testもreactive であった。

入院以後
(1)妊娠41週超で誘発目的にて入院。失神に至るまでは、おおむね今までの書き込みの通りである。誘発開始(09:40)よりPGE服用終了 (14:45)まで産科病棟師長で助産師である経験31年近い助産師がベッドサイドに付き添い刑事的に内診、バイタルチェック、CTGのチェックを行い看護記録に記載あり。
(2)(17:00)準夜勤務の助産師(経験20年)に交代。陣痛は2分おきと患者応答あり。子宮口3cm開大。
(3)(17:20)入院以来最初の嘔吐あり。(胃液様)show(+)
陣痛間歇2分、発作20〜30秒。助産師より呼吸法を指導す。fetal wellbeing 良好。患者「痛い、痛い」と声を出している。
(4)陣痛と悪心、嘔吐あるため夕食摂取せず。かわりにポカリスエットを十分摂取している。(18:00) CTG で異常所見なし。あいかわらず「痛い、痛い」と訴えあり。
(5)(21:30)胃液様嘔吐あり。ポカリスエットを摂取してはいるが、嘔吐が何回もあるので、ルート確保も兼ねて、5% glucose 500ml 点滴開始。(21:40) 子宮口4cm開大。児心音良好。
(6)(22:00)胃液様嘔吐あり。(23:00) 発汗多い。「もういや、家に帰りたい」との訴えあり。血性帯下を認める。
児心音良好。
(7)(0:00)こめかみが痛いとの訴えあり。発汗を認める。脱水気味。BP 155/84 HR74/min.。産婦人科医師に報告。点滴をnormal saline 500ml に変更指示あり。
(8)(0:10)胃液嘔吐あり。産婦人科医師に報告。プリンペラン1A 側管より投与の指示あり。よびかけに応答があり、開眼する。
(9)(0:14)突然の意識消失、応答に返事なし。SPO2 97%,
産婦人科医師に報告、すぐ来室。BP147/73 HR73/min.
産婦人科医師の診察。瞳孔、左右差なし。対光反射もあり偏心も認めない。血圧も安定し呼吸も安定。痛覚刺激に顔をしかめて反応。念のため内科当直医(経験6年の循環器内科 医)に診察を依頼。
(10)内科医師すぐに来室、患者の概略を説明のうえ、ヒステリー発作の可能性も含めての診察依頼。内科医師は一通りの診察を行い、「失神発作でしょう」と答えた。この記載はカルテの医師記載欄および看護日誌にも記載あり。ここで産婦人科医は内科医に「頭は大丈夫?」と質問した。内科医は肯定も否定もしなかった。(おそらく頷くか何かのジ ェスチャーをしたのではないか。これは推測)バイタルサインもよいので経過観察ということで意見一致。
(11)産婦人科医はここで陣痛と家族の期待に対する精神的負担による失神かと考えたので、主人に「今までこんな失神のような事なかったか」と質問すると、「なかった」と 主人答える。尿失禁を認めるも、全身状態安定。産婦人科医が主人に「全身状態が良いのでこのまま様子を見ます」と伝えた。
(0:25)BP148/69mmHg,sPO2 97% ここで一旦、産婦人科医と内科医が分娩室をでて、当直室に帰る。
(0:30)BP156/71mmHg,顔色は良い。
(0:40)CTG 再装着。児心音良好。バイタルサイン良好。
(1:00)BP152/84mmHg,SPO2 97-98% 呼びかけに対し、眠っているのか、返事がない。呼吸は平静でイビキも認められない。陣痛発作時は四肢を動かしたり、顔をしかめたりする。
(1:30)CTG 異常所見なし。呼びかけに対し応答なし。よく眠っている様。顔色良好。
(1:37)突然の痙攣発作出現。当直室の産婦人科医を呼ぶ。BP175/89mmHgと上昇、水銀血圧計でBP200/100mmHg。 SPO2 97%、いびきをかき始める。強直性の様な痙攣を認める。産婦人科医は強直性の様な痙攣と血圧の上昇から子癇発作と診断、すぐにマグネゾール20ml 1A 側管より静注すると痙攣はおさまった。引き続き微量注入装置を使用し、マグネゾールを 20ml/hr. のスピードで点滴を始めた。
(1:50)内科当直医を呼び出し、循環器系の管理を依頼するとともに、バイトブロックを咬ませ、口腔内と鼻孔を吸引した。バルーンカテーテルも挿入した。この時点で、母 体搬送を決断し、奈良医大付属病院に連絡し、当直医を呼び出して搬送を依頼した。
(2:00)BP148/75,HR76/min.SPO2 97%,R26/min.痙攣発作は認めない。二回目のBP144/71,HR96/min. 瞳孔散大。搬送用紙、紹介状を作成。奈良医大当直医より満床の返事あり。こちらに人手がないため、奈良医大の方で引き続き奈良医大での再検討もふくめ、他の受け入れ施設を探してくれるように依頼。また奈良医大よりのパート医師で、当患者をずっと外来で診察していた医師を電話で呼び出したが連絡がつかない。
(2:15)患者に痛覚反応を認める。ここで内科医と産婦人科医が話し合い、頭部CTスキャンを検討したが、今の時間ではもし奈良医大が引き受けてくれたなら、ここから1 5分程度で奈良医大着くだろう、(距離にして15kmで一般道だが一部四車線区間もあり、奈良にしては比較的整備されている区間)いつ母体搬送受け入れの返事がくるかもわからないし、いま移動する事による母体、胎児への悪影響を考えると、高次病院での検査、診断、処置が最善と判断した。その後内科医は、母体搬送を送り出すまで全身管理を手 伝ってくれた。
(2:30)産婦人科医師が患者家族への説明を行う。「子癇の疑いがあり、現在薬剤で対処しているが、これ以上の当院での対応は無理なので、現在奈良医大のネットワークを 通じて受け入れ病院を探しているので、返事を待って欲しい」マグネゾールを25ml/hr.に増量指示。
産婦人科医師は、とりあえず内科医当直医に患者のベッドサイドについてくれるように頼み、当直室で電話をかけ、電話を待ちつづけた。
その後(時間不詳)内科医と交代で患者ベッドサイドへ。主人をふくむ家族が患者を触るたびに血圧上昇を認めるので、触らないように指示。
時間が流れるうち、国立循環器病センターが受け入れ可との連絡あり。
(4:30)呼吸困難状態発生。気管内挿管。
(4:50)救急車へ移送。大阪へ。

長文になり申し訳ありません。

2:30 以後は適宜前に書いた書き込みで補ってください。皆様のご理解とご協力よろしくお願いします。
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この経過は、マスコミにも配布されたカルテのコピーを見ながら書いたのだそうです。
毎日のスクープやそれに追随した他の新聞やテレビも、このカルテコピー(と、たぶん看護記録も)を持っていたはずです。
これのどこに「6時間放置」などあるでしょうか、朝日が後で出した「1時間以上放置」でさえない。この妊婦は、いわば一瞬たりとも放置などされていないのですから。
あるいは、マスコミは、一瞬でも医師が患者のそばを離れたら、それを放置と呼ぶんでしょうか、そうでも「放置」という言葉を定義しないと、これらの報道は虚偽ということになります。そんな無茶苦茶な定義はあり得ません。

毎日新聞は、さも自慢げにその裏話を「支局長からの手紙」で披露しています。
これもあえて全文引用します。
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/nara/news/20061022ddlk29070364000c.html
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支局長からの手紙:遺族と医師の間で /奈良

 今年8月、大淀町立大淀病院に入院した五條市の高崎実香さん(32)が容体急変後、搬送先探しに手間取り大阪府内の転送先で男児を出産後、脳内出血のため亡くなりました。

 結果的には本紙のスクープになったのですが、第一報の原稿を本社に放した後、背筋を伸ばされるような思いに駆られました。

「もし遺族に会えてなかったら……」

 というのは、今回の一件はほとんど手掛かりがないところから取材を始め、かなり時間を費やして事のあらましをどうにかつかみました。当然ながら関係した病院のガードは固く、医師の口は重い。何度足を運んでもミスや責任を認めるコメントは取れませんでした。なにより肝心の遺族の氏名や所在が分からない。

「これ以上は無理」

「必要最低限の要素で、書こうか」

 本社デスクと一時はそう考えました。

 そこへ基礎取材を続けていた記者から「遺族が判明しました」の連絡。記者が取材の趣旨を説明に向かうと、それまでいくら調べても出てこなかった実香さんの症状、それに対する病院の対応が明らかになりました。それがないと関係者にいくつもの矛盾点を突く再取材へと展開しませんでした。

 さらに、患者、遺族は「名前と写真が出ても構わない」とおっしゃいました。「新聞、テレビ取材が殺到しますよ」と、私たちが気遣うのも承知の上の勇気ある決断でした。

 情報公開条例や個人情報保護法を理由に県警、地検、県、市町村などの匿名広報が加速するなか、記事とともに母子の写真、遺族名が全国に伝わり、多くの反響が寄せられています。それは実名と写真という遺族の「怒りの力」によるものに他なりません。

 支局の記者たちも、ジグソーパズルのピースを一つずつ集めるような作業のなかで、ぼやっとしていたニュースの輪郭がくっきりと見えた感覚があったに違いありません。手掛かりある限り、あきらめないで当事者に迫って直接取材するという基本がいかに大切で、記事の信頼性を支えるか。取材報告を読みながら、身にしみました。

 改めて、お亡くなりになった高崎実香さんのご冥福をお祈りします。【奈良支局長・井上朗】

 hogaraka@dream.com

毎日新聞 2006年10月22日
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病院側が情報を出せないのは、守秘義務があるからです。マスコミに患者の情報を話せるわけがない。そんなことをしたら、医師に科せられている守秘義務に反するし、昨今の個人情報保護法との絡みもあります。
それを「当然ながら関係した病院のガードは固く、医師の口は重い。何度足を運んでもミスや責任を認めるコメントは取れませんでした。」と、さも病院、医師が自己弁護のために隠したように書くことのいやらしさはどうでしょうか。

それと、この記事から分かることは、毎日新聞は患者側からしか取材をしていないということです。それをはからずも告白している。
あれほど病院や担当医を非難する記事を書くのならば、きちんと事実確認の裏付け調査を行い、さらに非難される側もきちんと取材して、それで初めて報道すべきです。それが良質なジャーナリストである最低限の責務ではないですか。それをしないような報道は、売れればいいだけ、センセーショナルな紙面を作れたらそれでいいというイエローペーパーと少しも変わらない。そんなものはジャーナリズムではない。

それと一番問題なのは、上記のカルテや看護記録のコピーを、毎日新聞の記者をはじめマスコミの者たちは持っていたことです。そういう情報を得ておきながら、「6時間放置」や「当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという」(「という」で結んでいるところに注目してください)などという、明らかな虚偽のことを、なぜ報道したのでしょうか?
それが事実と異なるのを知った上で、事実と異なることを報道するのは、誤報とは言わない。
それは捏造と言うべきです。

どうしてそういうことをしたのか?
今度も前回と同じ言葉で終わりそうです。

なんか裏にありそうです。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
2chにこの「支局長からの手紙」への痛烈な批判コメントが投稿されていました。
全文引用します。
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105 名前:文責・名無しさん[] 投稿日:2006/10/23(月) 23:49:07 ID:wEYKgnNM
 毎日新聞が今回のことを報道したことそのものは別にいいのではないかと思った。当初は。

 産科の崩壊が叫ばれている中、通常のお産のことしか取り上げない記事が多いが、今後更に周産期の死亡率を下げるには、今回のような難しい症例をなんとか救命できないか、というのはいずれ必要な議論だと思うから。
(しかし実際には、お産でほとんど死ななくなったため、何かが起こると医療機関の過失とされることが多くなり(特にマスコミ)、苛酷な勤務と相まって産科医が減少し、そのため通常のお産でさえ支障が出ていて、難しい症例の救命までは手が回らない状況。)
院長
2006/10/30 18:34
(つづき)
 今回の記事が、奈良の貧弱な医療を指摘し、そもそも脳出血のようなそれだけでも対応が難しい疾患が、妊婦に起こった場合にどのように対応していくべきか、に注目するならいい報道だったと思う。
 でも今回の報道は「かわいそう」という感情をもとに、読者受けする(しかし的はずれな)医療批判記事にしかなっていませんでした。

 突然の不幸に対して、遺族が医療機関に文句の一つも言いたい、何かできなかったのか、と思うのは当然だと思う。
 しかし、報道は理性的でなければいけない。
 難しい病態になったこと、その病院では対応できない状態だったこと、近隣に搬送できる病院がなかったこと、大阪へ搬送されたこと、1週間後に亡くなられたこと、もしかしたらもっとよい手だてがあったかもしれないこと、こうしたことを分けて論証すべきだった。
 しかし実際には、赤ちゃんの写真を載せて、「お母さんが分かるのか、仏壇の前だと不思議に泣き止むんです」。父晋輔さん(左)に抱かれる長男の奏太ちゃん」なんてお涙頂戴の三流記事。
(つづく)
院長
2006/10/30 18:40
(つづき)
 毎日新聞は比較的いい記事が多いと思っていたけど、今回は奈良支局が悪いのか、それとも、それを素通りさせた本社が悪いのか、いずれにしても本当にがっかりだ。

 こんな記事の内容で「スクープ」と言っている支局長には本当に残念だ。同じネタでもっと社会を動かせる記事が書けたはずだ。
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良質な批判というのはこうでないといけない。
私のは、感情が入り過ぎている。
ただ、私は医師の端くれとして、この毎日の記事の様な一方的に医療者側を悪者に仕立てるようなものに冷静ではおられない、というのもあります。
院長
2006/10/30 18:40

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