ある町医者の診療日記

アクセスカウンタ

zoom RSS [理不尽な訴え]-----2001/12/14(Fri)

<<   作成日時 : 2006/01/27 17:14   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

日経新聞に医療再生という連載記事があります。
その12月14日号に読者からとして患者側の苦情が載っています。中には確かにそうだというのもあるのですが、そうではない患者の誤解によるのもあります。
その一つ。
29歳の女性、最初は風邪のような症状ということで「村のお医者さん」にかかった。
以下、引用します。

−−−−−−−−−−−−−−−−−
 風邪のような症状だったが一向によくならないばかりか、10日ほどすると顔の右半分が麻痺してきた。再び受診すると「ベル麻痺」と診断され、ビタミン剤を投与された。
 症状が良くならないことに不安を感じ紹介状なしで大学病院に飛び込むと、この病気は初期にステロイド剤を投与すれば完治することを知らされた。私の場合は発症から時間がたっていたため、今も麻痺が残っている。
 正しく診断しておきながら、開業医がステロイド剤を使わなかったのは、副作用に不安を感じたからのようだが、紹介状を書こうともしなかった姿勢に不安が残る。おかしいと感じたら専門病院に患者を回すようにしてほしい。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−

もし、この患者さんが大病院に紹介してほしいと、本当にその開業に訴えたにもかかわらず、紹介状を書かなかったのだとしたら、これは医師の側に問題がある。
しかし、この文にはそうだとは書かれていない。私は、この患者さんはその「村のお医者さん」には何も相談せずに勝手に「大学病院」に行ったのだと思います。

ベル麻痺と診断し、ベル麻痺として通常の経過を示していたのなら「おかしい」と感じるわけもない。それを「おかしいと感じたら専門病院に紹介すべき」と言うのは、それこそ「おかしい」。
「風邪のような症状で」といい、この例は典型的なベル麻痺だったのでしょう。

また、「ステロイド剤を投与すれば完治する」というのも間違っています。
ステロイド剤を使わなくとも完治することがあるし、ステロイド剤を使っても完治しないこともある。問題は、ステロイド剤を投与する方が、しない場合よりもどれほど予後がいいのかということになります。
メルクマニュアルから引用します。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 コルチコステロイド(例、プレドニゾン60〜80mg/日経口投与を発症24〜48時間後に開始し、1週間投与後、2週間にわたり漸減量)が、麻痺残存を明らかに減少させ回復を促進させるとする研究もある。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ステロイドを使えばベル麻痺の全てを完治させる、というのではないのです。
あくまで「研究もある」であって、必ずステロイドを使うべきだとはしていません。

私はこのケースで問題なのはインフォームド・コンセントだけだと考えます。
顔面の筋肉が麻痺するのは誰でも不安になって当然です。そういう患者さんにきちんと説明をして、その不安を取り除いてあげなかったことが担当医として不備だった。
また、ステロイドを使うべきかどうかも、患者に説明しておくべきだった。その上で使わないと決め、結果として麻痺が残ったとしても問題はなかった。
要は、このケースでこの「村のお医者さん」がこういう説明をしていたかどうかです。このケースの問題はこれだけだと私は思います。

実際、そういう説明を「村のお医者さん」がしておらず、かつこの患者さんがその説明の不備を訴えたのなら、私もこの患者さんの主張に同意しますが、このケースではそうではない。「おかしいと感じたら専門医に紹介」というのには同意しかねます。
理不尽な訴えだと考えます。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
Firefox 2 無料ダウンロード
[理不尽な訴え]-----2001/12/14(Fri) ある町医者の診療日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる